2013年7月1日月曜日

乗車券等が発行されない場合

乗車券等が発行されない、いわゆるチケットレスサービスによる乗車等の場合にも、改正法附則第5条第1項《旅客運賃等の税率に関する経過措置》に規定する経過措置が適用されますか。

事業者が、旅客運賃、映画・演劇を催す場所等への入場料金を施行日前に領収している場合において、当該対価の領収に係る課税資産の譲渡等が施行日以後に行われるときは、当該課税資産の譲渡等については旧税率が適用されます(改正法附則5①)。
この経過措置が適用されるかどうかの判定に当たっては、乗車券等が発行されているかどうかを問いません。
したがって、乗車券等が発行されない場合であっても、その旅客運賃等を施行日前に領収している場合には、この経過措置が適用されます。

施行日前に「領収している場合」の意義

旅客運賃、映画・演劇を催す場所等への入場料金を施行日前に「領収している場合」とは、具体的にどのような場合をいうのですか。

事業者が、旅客運賃、映画・演劇を催す場所等への入場料金を施行日前に領収している場合において、当該対価の領収に係る課税資産の譲渡等が施行日以後に行われるときは、当該課税資産の譲渡等については、旧税率が適用されます(改正法附則5①)。
ここでいう、施行日前に「領収している場合」とは、おおむね次のような場合をいいます(経過措置通達4)。

①乗車、入場又は利用(以下「乗車等」といいます。)をすることができる日が施行日以後の特定の日に指定されている乗車券、入場券又は利用券等(以下「乗車券等」といいます。)を施行日前に販売した場合(前売指定席券、前売入場券等)

②乗車等の日が施行日以後の一定の期間又は施行日前から施行日以後にわたる一定の期間の任意の日とされている乗車券等を施行日前に販売した場合(回数券等)

③施行日の前後を通じて又は施行日以後の一定期間継続して乗車等することができる乗車券等を施行日前に販売した場合(定期乗車券等)

④スポーツ等を催す競技場等における年間予約席等について、施行日の前後を通じて又は施行日以後の一定期間継続して独占的に利用させるため、あらかじめ当該一定期間分の入場料金を一括して領収することを内容とする契約を施行日前に締結している場合(プロ野球の年間予約席等)

旅客運賃等の税率等に関する経過措置の概要

事業者が、旅客運賃、映画・演劇を催す場所等への入場料金を施行日前に領収している場合において、当該対価の領収に係る課税資産の譲渡等が施行日以後に行われるときは、当該課税資産の譲渡等については、旧税率が適用されます(改正法附則5①)。

この経過措置の適用対象となる旅客運賃等の範囲は、以下のとおりです(改正令附則4①)。
① 汽車、電車、乗合自動車、船舶又は航空機に係る旅客運賃(料金を含む。)
② 映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ又は見せ物を不特定かつ多数の者に見せ、又は聴かせる場所への入場料金
③ 競馬場、競輪場、小型自動車競走場又はモーターボート競走場への入場料金
④ 美術館、遊園地、動物園、博覧会の会場その他不特定かつ多数の者が入場する施設又は場所でこれらに類するものへの入場料金

施行日前後の返品等の取扱い

販売商品の返品について、例えば、4月中に返品を受けた商品は、3月中の販売に対応するものとして処理している場合、平成 26 年4月中の返品については平成 26 年3月中の販売に対応するものとして、旧消費税法の規定に基づき売上げに係る対価の返還等に係る消費税額の計算を行って差し支えないですか。

施行日前に行った商品の販売について、施行日以後に商品が返品され、対価の返還等をした場合には、旧消費税法の規定に基づき売上げに係る対価の返還等に係る消費税額の計算することとされています(改正法附則 11)。
照会のように、合理的な方法により継続して返品等の処理を行っている場合には、事業者が継続している方法により、売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を計算しても差し支えありません。
なお、このように取り扱う場合には、取引当事者間において取り交わす請求書等に適用税率を明記し、取引の相手方は当該請求書等に記載された税率により仕入れに係る対価の返還等に係る消費税額を計算することとなります。

施行日を含む1年間の役務提供を行う場合

平成 26 年3月1日に、同日から1年間のコピー機械等のメンテナンス契約を締結するとともに、1年分のメンテナンス料を受領した場合、消費税法の適用関係はどのようになりますか。

役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は、物の引渡しを要するものにあってはその目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しないものにあってはその約した役務の全部を完了した日とされています(基通9-1-5)。
照会の役務の提供は、物の引渡しを要しないものですから、資産の譲渡等の時期は役務の全部を完了する日である平成 27 年2月 28 日となります。
したがって、施行日以後に行う課税資産の譲渡等となりますから、原則として新消費税法(新税率)が適用されます。
ただし、契約又は慣行により、1年分の対価を収受することとしており、事業者が継続して当該対価を収受したときに収益に計上しているときは、施行日の前日(平成 26 年3月 31日)までに収益に計上したものについて旧消費税法(旧税率)を適用して差し支えありません。

決算締切日の取扱い

当社(3月決算法人)では、毎年3月 20 日を決算締切日としており、法人税基本通達2-6-1《決算締切日》の取扱いを適用していますが、この場合の消費税法の適用関係はどのようになりますか。

法人税基本通達2-6-1《決算締切日》の取扱いを適用している場合であっても、施行日前に行われた資産の譲渡等及び課税仕入れ等については旧消費税法が適用され、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等については、経過措置が適用される場合を除き、新消費税法が適用されます(改正法附則2)。
したがって、照会の場合、平成 26 年3月 21 日から平成 26 年3月 31 日までの間に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等については旧消費税法が適用されることとなります。なお、継続的に、売上げ及び仕入れの締切日を一致させる処理をしている場合には、平成26 年3月 21 日から平成 26 年3月 31 日までの間の売上げ及び仕入れについては、平成 26年4月分の売上げ及び仕入れとして、消費税の申告をして差し支えありません。

施行日の前日までに購入した在庫品

新消費税法は、経過措置が適用される場合を除き、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用されます(改正法附則2)。
したがって、照会のように、施行日の前日(平成 26 年3月 31 日)までに仕入れた商品を施行日以後に販売する場合には、当該販売については新消費税法(新税率)が適用されますが、商品の仕入れについては施行日の前日までに行われたものですから、課税仕入れに係る消費税額は旧消費税法の規定に基づき計算することとなります(経過措置通達3)。